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犬を拾った。 大きいが、とても気性の穏やかな犬だ。 大人になった犬を拾うなんてと、心やさしい友は言う。 大人になると、なかなか馴れないものだから。 それに、ペットは飼ってはいけないって言ってなかった? 大丈夫。ちっとも吼えないのよ。 わたしが仕事から帰ると、玄関にちょこんと座って迎えてくれる、 かわいいやつだ。 わたしは毎日、わくわくしながら夕食の買い物をする。 足早に帰り道を辿る。 アパートの壁の角が見えるころにはたまらずに駆け出している。 そのくせドアの前に立つと、息を整えるために立ち尽くす。 玄関のドアを開ければ、今日も彼が笑顔で待っているはずなのに、 わたしは濃密な不安に喉を詰まらせて動けなくなってしまう。 小さなスポーツバック片手に、笑顔で部屋を出て行った彼の姿を さがしている自分。 そんな自分の姿をを恐れて、ドアの前で立ち尽くす自分。 荷物をなげすて、疲れきって歩けなくなるまで街を彷徨ったこともある。 ――コツン。 遠慮がちに、とても小さな小さな音が響いた。 ドアを内側から叩く音。 わたしは慌てて鞄から鍵をひっぱり出し、 立ち尽くしていた時間をとり戻そうと鍵を挿す。 鍵を解除する。 ドアノブに手を掛け、勢いをつけて重いドアを引き開ける。 わたしを見上げる大きくて真っ直ぐな瞳。 その瞳を見ると、わたしはもう自分に嘘がつけなくなってしまう。 「腹を空かせた犬を拾って暮らし向きをよくしてやれば、 その犬はあなたに噛みついたりしない。 それが犬と人間の一番大きな違いだ」 ――― マーク・トウェイン
by e--mi
| 2005-04-03 11:36
| kaku
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