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「行きたいの」 彼女が言うので、僕は「どこへ?」と聞く。 「行きたいのよ。あなたにはわからない?」 わからないかと聞かれると、僕は本当はわかってるのかもしれないとも思う。 わかっているのに、わからないふりをしている。「なぜ?」と僕は聞いてみる。 なぜ彼女はそう言ったのだろう。なぜ僕はわからないふりをしているのだろう。 「だってあなたも私と同じ気持ちのはずだから」 彼女はそう言って笑うばかりだ。僕は自分の胸に手を当てて考えてみる。 彼女と同じ気持ちがここにもあるのだ。 心臓がとくとくと鳴っている。とくとくがどきどきに変る。胸が苦しくなる。 なのに僕には答えがわからない。彼女が行きたくて、僕も本当は行きたいところ。 焦りだけが募って、手の平にじわりと汗が浮かぶ。彼女の冷たい手が僕の 熱い手に触れる。 「大丈夫よ」 僕の手は震えていて、「何が大丈夫なんだよ」と叫びたい衝動が身体を圧迫する。 一本の線に繋げると、とてつもない長さになるのだろう神経が赤く染まって 千切れそうになっている。 「行きたいの」 彼女の目はもう僕を見ていない。僕は「どこへ?」と聞きたいのに聞けない。 何度も彼女は僕に訴えたけど、時間は有限で、残された時間は少ない。 彼女は哀しそうに振り返り、僕を包んでいた手を離す。唇が震え、かたちを変化させ、 何かを訴えようと必死に動いているのに、僕は彼女の声を聞くことが出来ない。 頬を次々と伝うものがあり、僕はそれを手の甲でごしごしと擦った。 そうなんだと、今頃になって気づくなんて、僕はやっぱり大馬鹿者だ。 すでに失ったものや、これから失おうとしている時間の貴重さを、 いつも失うと知ってから後悔するのだ。 僕は叫ぶ。もう遅いのかもしれない。間に合わないかもしれないけど。 小さく消えそうになっている彼女の灯りに向かって走り出す。 「僕も行きたいんだ!」 まだ間に合います。乗り遅れないようにご注意下さい。 乗り遅れた方は、紙テープを持って出航を見送りましょう。 ★☆★☆★☆★【東京湾遊覧船上パーティ】☆★☆★☆★☆★☆ 日時:10月8日(土) 18時30分集合(19時乗船 遊覧90分) 参加費:6000円 (乗船料、洋食ビュッフェ、飲み放題込み) 参加募集締め切り: ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
by e--mi
| 2005-10-02 12:46
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