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私の彼は小さな木造のおんぼろアパートで一人暮らしをしている。今時珍しい苦学生というやつで、バイトで生活資金を稼ぎながら大学に通っている。私と彼は夏休みに始めたバイト先で知り合い、秋になってから付き合いだした。彼が覚えているかどうかはわからないが、今日はちょうどその一ヶ月目記念日だ。 背は少し高めで細い手足に整った顔立ちと、黙っていてももてそうな雰囲気なのに彼女がいなかったのは、この貧乏のせいなのだろうなと思いながら部屋の入り口に立って部屋を見渡した。 「狭くてごめんな」と征人が言うので、私は首を横に振ってにこりと笑った。 「お邪魔しまーす。自分でバイトして生活してるなんてエライよね」 えらいと思うのは本当だった。でも、少し複雑な気持ちがあるのも本当だ。デートのたびにプレゼントを貰う友人の話を羨ましいとは思っても、それがあるべき姿だとは思わない。ただ、たった一つだけ、私は征人に買って欲しいものがあるのだ。安いものでいいのに、気軽にそれを言い出せない事実に私は少しばかり戸惑っている。 初めて訪れる征人の部屋は、中に入っても外観に劣らずおんぼろで狭かったが、キレイに整理整頓されていた。自分の雑然とした部屋が恥ずかしくなるくらいだ。それを征人にいうと、 「たんに物がないだけだよ」と頭をかいた。 確かにそうかもしれないが埃っぽさもない。ものが少ないから掃除もやりやすいのだろうかと勝手なことを考えながら、「どうぞ」と征人が用意してくれたつぎはぎのある座布団に座り、手に持っていた白い箱を机の上に置いた。 「プリンを買ってきたんだけど一緒に食べない?」 「ありがと。お茶をいれるね……といってもインスタントのコーヒーしかないけどいいかな?」 「うん、いいよ。ありがと」 やかんに水を入れて火にかける征人の背中にドキドキしながら、照れ隠しに部屋を見回すと、五百円玉のイラストが入った缶が目についた。 「ねえあれ、貯金箱?」 「うん。一応ね。ぜんぜん中身入ってないんだけど」 「えー、そうなの? とかいいながら結構貯まってたりして」 私は立ち上がってアルミの貯金箱を持ち上げ、カシャカシャと振ってみた。 「本当だ、軽い」 冗談っぽく素直に感想をいい、振り返ろうとしていつの間にか背後に立っていた征人の胸と肩がぶつかる。 「わっ、ごめん」 驚いて身体を離そうとした私の手から征人は貯金箱を取り上げ、背中に押しつけられた古びた箪笥の上に丁寧に置いた。 「これは幸せを貯める貯金箱なんだ」 首を反らして見上げるような位置にある征人の顔には子供のように悪戯っぽい表情が浮かんでいて、私はまたもやドキドキと速くなる心臓を静められない。 誘われるように瞼を閉じた私の耳に、いつもは同年代だとは思えない現実的な視点で語る征人の唇から、初めて夢のような言葉がささやかれるのを白熱した意識の片隅で聞いていた。 「安物しか買えないけど、クリスマスの季節になったら貯金箱の貯金をはたいて指輪を買いに行こう」 【11/21】登場人物紹介 ☆片倉 麻里(かたくら まり)大学一回生/20歳(5月16日生) ☆橘 征人(たちばな ゆきひと)大学一回生/19歳(12月23日生) ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼【【恋愛物語】】▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼ 創作で恋愛物語を書いて秋を満喫しましょう♪ というトラバ(妄想)企画です。 ルールは『創作であること』 『恋愛ものであること』だけです。 期限は10月31日まで トラバ先:http://zoobee.exblog.jp/tb/3551390 ※どなたでも参加いただけるようにこのテンプレ を文末にコピペしてください。 企画元:移動動物園 http://zoobee.exblog.jp/ ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△ もっと妄想っぽい話にしたかったんだけどな・・・なんて(笑 妄想っぽいのはタイトルだけでした(ダメ
by e--mi
| 2005-10-16 12:08
| kaku<eggshell>
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