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僕は長い間、シタの世界を漂っていた。 今思い返しても、それがどんな時間だったのか、 どんな風に過ぎていったのか、思い出せない部分も多いけど。 確かにそういう時間は存在していて、 少なくない意味を持っていたのだと思う。 今日の自分がここにいるから。 僕は相変わらず、空に恋した魚のように水面ぎりぎりまで浮上し、 薄いベールを透かしてウエを見るあいだ、 季節が幾つも巡っていくうちに気がついたことは、 シタにいるかぎり、どんなにウエに近づこうと、 僕の姿も影も存在も、何一つウエからは見えないということだ。 彼女は時々、川に架かった橋を渡ったけど、 そして思い出したように、何か深刻なものを探す視線が川面をさ迷ったけど、 彼女の大きな瞳が僕を映すことはなかった。 …………ミ……タ、イ。 叶うはずのない願いだった。 シタの世界のものは、ウエの世界には住めない。 それが決まり事。 ……デモ、ボクハモウイチド、ジブンノメデタシカメタイカラ。 行ってみよう。 それだけだ。僕を抑えようもなく突き動かしているものは。 守っていたものを土台にして。 頭上の扉を潜り抜け、まだ誰もいない岸に上がる。 水を吐き出し、ゆっくりと、深呼吸する。 それが僕の儀式だから。 ――ごぼ……ごぼごぼっ。 泡立った胸が、熱湯を飲み込んだように痛い。 痛みは指の先までひろがり、全身を等しく包み込んだ。 ――――ゴホッ。ゴホッ、ゴホ……ゴホッツ……。 咳が徐々に収まり、意識が戻ってくると、 丸めたまま強張っていた手足をぎこちなく広げた。 「ぷはっ!」 土の上に仰向けになり、見上げた空はとても澄んでいた。 ############################## end. だいぶ抽象的・・・色々な想いがごった煮状態です。 ブログに参加する、というのもその内の一つでした。
by e--mi
| 2005-02-20 15:26
| kaku<山の波間に>
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